📋 この記事でわかること
AIで内製した業務ツールが止まった日に、何を、どの順番でやるか。当社が自社サイトの運用で実際に決めた手順を、そのまま公開します。原因究明より先に被害を確定する理由、直せない会社に共通する3つの記録の欠落、AIに修正を頼むときに渡す情報と渡してはいけない情報、そして紙1枚で足りる復旧手順書の作り方まで扱います。読み終えたその日に、5項目のメモを1枚書けます。止まってから読むより、止まる前に読むほうが安く済みます。
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止まる日は、いちばん忙しい日に来る
昨日まで動いていたものが、今日は動かない
AIで内製した業務ツールを持つ会社が、必ず一度は通る日があります。昨日まで当たり前に動いていた処理が、今日は途中で止まる。画面には見慣れない文字列が出ている。作った本人も、その文字列を初めて見る。そういう日です。
そしてこの日は、たいてい忙しい日に来ます。月末の締め、繁忙期の受注ピーク、担当者が出張に出ている午後。仕組みが最もよく使われる時期は、扱う量が最も増える時期でもあるからです。量が増えたときに表に出る設計上の無理は、暇な日には顔を出しません。
止まったこと自体は事故ではありません。事故になるのは、止まったあとの動き方が決まっていないときです。この記事では、当社が自社サイトの運用で決めた手順を、そのままお渡しします。
「再実行したら直った」で終わらせない
止まったツールは、もう一度動かすと動くことがよくあります。業務が回り始めるので、その日はそれで終わります。翌朝には、止まったこと自体を誰も覚えていません。
ここで終わらせると、同じことがもう一度起きます。しかも二度目は、一度目より悪い条件で来ます。再実行で直ったときこそ、記録を残すタイミングです。原因が分からなくて構いません。日時、どの操作の途中だったか、画面に何が出ていたか。この3つを書くだけで、二度目の切り分けにかかる時間がまるで変わります。
「再実行したら直った」は、直っていません。原因が残ったまま、症状だけが消えた状態です。消えた症状は、必ず戻ってきます。
怖いのは性能の限界ではなく、復旧できなさ
内製AIツールでいちばん怖いのは、AIの性能が足りないことではありません。止まったときに、原因を追える記録も、追える人もいないことです。動いているうちは最高の道具ですが、止まった瞬間に業務ごと止まります。そして、なぜ止まったのかを知る手段がありません。
この「復旧できなさ」は、画面には映りません。権限の穴やデータ量の限界と同じで、動いている限り誰も気づけません。気づくのは、止まった日の午後です。内製AIツール診断で最初に確認するのも、動作の速さではなく、この復旧の可否です。
止まった日に、最初にやること
原因より先に、被害を数える
止まったと分かると、原因を探しに行きたくなります。手を動かせる人ほどそうなります。しかし業務が乗っている仕組みでは、先にやることがあります。何件が処理済みで、何件が未処理で、二重に処理されたものがいくつあるか。この3つの数を確定させることです。
順番を間違えると、原因を追っている間に、取引先や顧客への影響が静かに広がります。請求が二重に飛ぶ、発送が漏れる、在庫の数が合わなくなる。あとから範囲を特定する作業は、その場で数えるより何倍も重くなります。関係先への説明も、範囲が確定していなければ始まりません。
被害の範囲さえ押さえていれば、原因究明は落ち着いて進められます。まず数える。これが当社の第一手です。
止める判断を、誰がするか
次に難しいのが、止めるかどうかの判断です。動かし続けたほうが被害の小さい障害と、動かし続けるほど被害が広がる障害があります。二重処理や誤送信が起きているなら、迷わず止めます。表示が崩れているだけなら、止めずに直します。
この判断は技術の問題ではなく、業務の問題です。決めるのは、作った本人ではなく業務の責任を持つ人です。そして平時のうちに「誰が止める判断をするか」を決めておかなければ、止まった当日は誰も判断しません。判断されないまま動き続けるのが、いちばん被害の大きくなる形です。
止める権限を現場に渡すことを恐れる会社がありますが、逆です。止めてよいと言われていない現場は、おかしいと気づいても動かし続けます。
応急処置と恒久対応を、はじめから分ける
業務を戻す作業と、原因に手を入れる作業は別物です。混ぜると、応急処置で業務が回った時点で気持ちが済んでしまい、根本の原因が残ります。残った原因は、次の忙しい日に同じ症状で戻ってきます。
当社は、応急処置をした時点で「恒久対応が未完了である」と記録に残す運用にしています。書かれていない対応は、終わったことにされるからです。応急のまま半年動いている処理は、どの会社にもあります。
止まったときの型を、5つに固定する
障害のたびに手順を考えていると、判断が遅れます。順番を先に決めておけば、慌てずに動けます。当社が使っている型は、次の5つです。
| 手順 | やること | やってはいけないこと |
|---|---|---|
| 1. 止める判断 | 被害が広がる障害かどうかを決める | 判断者を決めずに現場任せにする |
| 2. 被害の確定 | 処理済み・未処理・二重処理を数える | 数える前に原因を探しに行く |
| 3. 応急処置 | 業務が回る形にいったん戻す | 応急のまま恒久対応を忘れる |
| 4. 恒久対応 | 原因に手を入れ、再発を防ぐ | 一度に複数箇所をまとめて直す |
| 5. 記録と振り返り | 日時・症状・対応・確認方法を残す | 直ったので書かずに終わる |
この表を印刷して、ツールを使う場所に貼っておいてください。作った本人が不在でも、最初の1時間の動き方が変わります。
いまお使いの仕組みで、この5つのうちどこが埋まっていないか。内製AIツール診断では、動いている実物を拝見して、止まった原因を追える記録があるか、復旧の手順が言語化されているかを点検します。初回のヒアリングは無料・オンライン・所要60分です。
直せない会社に共通する、3つの欠落
何が起きたかの記録がない
1つ目は、障害そのものの記録がないことです。どこで止まったのか、どんな入力だったのか、何が返ってきたのか。これが残っていないと、対応はすべて推測になります。推測で直すと、直ったかどうかも推測になります。
記録は、凝った仕組みでなくて構いません。日時と症状を書いたメモが1か所に集まっているだけで、3回目には傾向が見えます。「月初に多い」「件数が多い日に出る」といった傾向は、記録がなければ絶対に見えません。傾向が見えれば、原因の候補は一気に絞れます。
何を変えたかの履歴がない
2つ目は、変更の履歴がないことです。AIに何度も修正を頼むうちに、いつ何を変えたのかが分からなくなります。すると「昨日から動かない」という最も有力な手がかりが、役に立たなくなります。昨日との差分が分からないからです。
内製AIツールでこの欠落が起きやすいのは、修正が速いからです。思いついた瞬間に指示を出せば、数分で直ります。速いぶん、記録を残す間もなく次の修正に移ります。手で書いていた時代より、履歴は残りにくくなっています。
「正常な状態」が定義されていない
3つ目が、いちばん見落とされます。そもそも「正しく動いている状態」を言葉にしていないことです。定義がなければ、直ったかどうかを判定できません。画面にエラーが出なくなっただけで、直ったことにしてしまいます。
判定は数で書きます。入力した件数と出力の件数が一致する。合計金額が元の資料と合う。同じ番号が二度出てこない。見れば白黒がつく形にしてください。エラーが出ないことと、結果が正しいことは別物です。この2つを分けられるかどうかが、運用の質を決めます。
実際、最も見つけにくい障害は、止まる障害ではありません。止まらずに、間違った結果を出し続ける障害です。エラーは出ないので、誰も気づきません。気づくのは、取引先から連絡が来たときです。
「AIに直して」と頼むときに、渡すもの・渡さないもの
感想ではなく、事実を渡す
AIに修正を頼むとき、進む人と進まない人の差は、渡す情報の質にあります。「動かないので直してください」だけでは、AIは推測で答えるしかありません。推測に推測を重ねた結果が、「直したら別の場所が壊れた」です。
渡すのは事実です。いつから、どの操作で、何件目で、どんな表示が出て止まったのか。エラーの文言はそのまま貼ります。要約したり、自分の解釈を足したりしないでください。解釈は、事実を渡したあとで一緒に考えれば済みます。
| 項目 | 渡し方の例 |
|---|---|
| いつから | 7月28日の朝の実行までは正常。同日夕方の実行から発生 |
| どの操作で | 取り込み後の集計処理。取り込みまでは完了している |
| どこまで進んだか | 1,200件のうち847件目で停止 |
| 画面の表示 | 表示された文言をそのまま貼る(要約しない) |
| 直前に変えたこと | 前日に出力の並び順を変更した |
| 期待する結果 | 入力件数と出力件数が一致し、重複がないこと |
この6項目を埋めてから相談すると、やり取りの往復が減ります。埋められない項目があるなら、そこが記録の欠けている場所です。
一度に1か所しか変えない
気になる箇所をまとめて頼みたくなりますが、これが「直したら別の場所が壊れる」の主な原因です。一度に複数を変えると、効いた修正と壊した修正の区別がつきません。切り分けに戻る時間のほうが、まとめて頼んで浮いた時間より長くなります。
当社は、1回の指示で変える範囲を1か所に限る運用にしています。面倒に見えて、結果的にはこのほうが速く終わります。そして、変更のたびに「正常な状態」の定義で確認します。1か所ずつ変えて、そのつど確認する。この2つが揃って初めて、修正は前に進みます。
貼る前に、エラー文へ目を通す
エラーの文言には、顧客の氏名やメールアドレス、接続情報、認証キーが混じります。そのまま貼れば、そのまま外へ出ます。貼る前に一度読み、該当箇所は伏せてください。
そのつど迷わないよう、入力してよい情報といけない情報を先に決めておきます。当社は、認証情報と顧客の個人情報は伏せる、公開済みの内容と自社で作った下書きはそのまま渡す、という線引きで運用しています。この線引きの作り方は、Claude 法人導入支援でも最初に手をつける項目です。
当社がサイト運用で決めた、2つの約束
変える前に、戻せる状態を作る
当社はこのコーポレートサイトを、Claude Code で運用しています。日本語の指示だけで記事を書き、ページを更新し、サイトそのものを改修しています。その運用で最初に決めたのは、速く直す方法ではなく、変更の前に戻せる状態を作るという約束でした。
手順は単純です。作業に入る前に、いまの状態を保存する。作業後に問題が出たら、迷わず戻す。戻してから、あらためて原因を考える。壊れた状態のまま原因を追うのは、業務を止めながらの捜査です。失うもののほうが大きくなります。
戻せる状態がない仕組みは、修正するたびに賭けになります。賭けを避けようとすると、誰も何も直さなくなります。放置された仕組みは、放置されている間も古くなり続けます。
なぜ変えたかを、日本語で残す
もうひとつの約束が、変更の理由を日本語で残すことです。何を変えたかは後から追えますが、なぜ変えたかは記録しなければ消えます。そして障害対応でいちばん役に立つのが、この「なぜ」です。
難しく書く必要はありません。「表示が崩れていたので余白の指定を変えた」で十分です。数か月後の自分は他人だと思って書く。これが記録の要点です。当社は用語の定義をそろえる目的でIT業界用語辞典も自社運用していますが、社内の記録も同じで、言葉が揃っていない記録は読み返せません。
安全のための仕組みが、攻めやすさになる
戻せる状態を作る、理由を残す。どちらも地味な決めごとです。しかしこの2つがあると、変更のハードルが下がります。戻せると分かっていれば、思い切って試せるからです。
安全側の仕組みは、守りの投資に見えて、実際には速度を上げます。当社が自社サイトで日本語の指示だけで改修を回せているのは、指示の書き方が特別だからではありません。失敗しても戻せる形にしてあるからです。
止まる前に用意する、1枚の復旧手順書
書くのは5項目だけ
復旧手順書と聞くと身構えますが、紙1枚で足ります。書くのは次の5項目です。
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 正常な状態の定義 | 何がどうなっていれば正しいか(数で書く) |
| 止める判断をする人 | 氏名と、その人が不在のときの代理 |
| 被害を確認する場所 | 件数・金額・重複をどこで数えるか |
| 戻す手順 | 直前の状態に戻す具体的な操作 |
| 連絡先 | 社内の報告先と、外部の相談先 |
この5項目が埋まっていれば、作った本人が不在でも初動が取れます。初動が取れるかどうかで、復旧までの時間は桁で変わります。
埋まらない項目が、いまの弱点
書いてみると、埋まらない項目が出ます。それが現在の弱点です。「正常な状態」が書けないなら、判定基準がありません。「戻す手順」が書けないなら、変更が一方通行になっています。
弱点が言葉になった時点で、次の一手は決まります。全部を一度に直す必要はありません。埋まらなかった項目のうち、業務が止まったときに最も困るものから順に手を入れます。
属人化は、事故のリスクであり、経営上の制約
作った本人しか直せない仕組みは、その人が休めない仕組みです。旅行に行けない、体調を崩せない、他の仕事に移れない。これは事故のリスクであると同時に、経営上の制約です。人を採用しても任せられず、担当を替えられず、その人の時間が上限になります。
記録を残す作業は、会社を守る作業であると同時に、その人が休むための作業です。引き継げる形にして初めて、内製AIツールは個人の便利道具から会社の資産に変わります。
当社の内製AIツール診断では、止まった原因を追える記録があるか、復旧の手順が言語化されているか、作った本人以外が運用できるかを、動いている実物で点検します。ご用意いただくのは画面ひとつだけです。資料も事前整理も要りません。差し支えのある情報は伏せていただいて構いません。
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よくある質問(FAQ)
記録を残す習慣が、どうしても続きません。
丁寧に書こうとするから続きません。項目を日時と症状の2つに減らし、書く場所を1か所に固定してください。当社も凝った様式はやめました。続く記録のほうが、立派で書かれない記録より役に立ちます。
エラーの文言は、そのままAIに貼ってよいのですか。
貼る前に読んでください。エラーの文言には顧客の情報や認証キーが混じります。該当箇所を伏せてから渡します。入力してよい情報の線引きを先に決めておけば、そのつど迷わずに済みます。
「正常な状態の定義」は、具体的にどう書きますか。
数で書きます。入力件数と出力件数が一致する、合計金額が元の資料と合う、同じ番号が二度出てこない。見れば白黒がつく形にしてください。エラーが出ないことを定義にすると、判定が感想になります。
データが増えて遅くなってきました。これは障害ですか。
障害の前触れです。少量では表面化しなかった設計上の無理が、量で表に出ています。遅いだけのうちは業務が回りますが、やがて途中で止まる、処理が飛ぶという形に変わります。遅くなり始めた段階で点検するのが最も安く済みます。
直したあと、また壊れないか不安です。
確認の項目を紙に書き、変更のたびに同じ順番で見てください。手作業の確認でも、順番が固定されていれば見落としは大きく減ります。確認そのものを自動化できるかは構成によりますので、実物を見せていただければ判断できます。
障害対応を外部に任せられますか。
技術的な切り分けと修正は任せられます。ただし、止める判断と業務上の優先順位は社内に残してください。何を先に戻すかは、業務を知っている人にしか決められません。当社も、判断は御社に持っていただく形でご一緒しています。
顧客への影響が出たときは、何から手をつけますか。
影響範囲の確定が先です。何件に、いつ、どの内容が届いたかを数え、事実関係を記録に残します。そのうえで、契約や法令に関わる通知の要否は顧問の弁護士にご確認ください。当社がお伝えするのは、技術的な原因と再発防止までの範囲です。
作ったのが非エンジニアの社員です。見せても大丈夫でしょうか。
問題ありません。業務が動くところまで作り上げている事実そのものが、社内に力があることの証明です。当社は作り方の是非を採点する場ではなく、広げるために何が足りないかを整理する場としてお使いいただいています。
✏️ 山崎 将史より
私はWeb構築を25年やってきて、システムが止まる場面に何度も立ち会いました。共通しているのは、慌てた側から状況が悪くなるということです。焦って直そうとして、直す前の状態が分からなくなる。分からなくなってから外に助けを求めるので、助ける側もゼロから調べ直すことになります。だから型が要ります。止める、数える、戻す、直す、書く。この5つを紙に書いて貼っておくだけで、最初の1時間の動き方が変わります。
内製AIツールが以前の内製ツールと違うのは、作るのも直すのも速いことです。速さは大きな武器ですが、記録を残す間もなく次の修正に移れてしまう、という副作用があります。手で書いていた時代より、履歴は残りにくくなりました。だからこそ、速く作れる会社ほど、残す仕組みを先に決めたほうがいい。順番が逆になると、動くものだけが増えて、誰も全体を説明できない状態になります。
当社が自社サイトの運用で最初に決めたのも、速く直す方法ではなく、戻せる状態を先に作るという約束でした。地味な決めごとですが、これがあると挑戦のハードルが下がります。戻せると分かっていれば、思い切って変更を試せるからです。安全のための仕組みが、結果として攻めやすさになる。この感覚は、実際に運用してみて腑に落ちました。
もうひとつ書いておきたいのが、属人化の話です。作った本人しか直せない状態は、会社にとってのリスクである前に、その本人にとってつらい状態です。休めない、任せられない、離れられない。私自身、自社サイトの更新を全部抱えていた時期があり、あの息苦しさはよく分かります。記録を残すのは、会社のためだけでなく、自分が休むための作業です。
当社には「机上の空論を売らない」「自分の体で実証してから提供する」という方針があります。この記事に書いたことは、どれも自社の運用で先に踏んだ手順です。いま、止まった原因が分からないまま再実行でしのいでいるなら、その状態は長く続きません。何が起きているのかを言葉にするところから始めてください。ご自身で難しければ、動いている画面を見せていただければ、危ないところと直す順番をその場でお伝えします。初回のご相談は無料・オンライン・所要60分、全国対応です。