公開日:2026-08-13/最終更新:2026-08-13(JST) 制度・料金は記事内に記載の時点の情報です。
📋 この記事でわかること
非エンジニア社員向けに Claude の社内研修を設計するためのカリキュラム設計図です。全4回(各90分)の時間割を、回ごとの到達目標・持ち帰る成果物・時間の内訳まで示します。階層別の分け方、演習課題の作り方、研修後に残す仕組み、外部に発注する場合の確認項目、助成金を検討するときの前提まで扱います。研修計画書と発注仕様書の下書きにそのまま使えます。
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立場の開示:この記事を書いている株式会社エム・ジー・ケイ(M.G.K.)は、Claude の法人導入支援と社内研修を提供しています。つまり比較される側です。そのため本記事はカリキュラムの設計図そのものを公開し、発注先を比べる確認項目も他社に同じく使える形で第6章に置いています。
「Claude を全社に入れることは決まった。次は研修だが、何を何回やればよいのか分からない」。導入の相談で、契約の次に必ず出てくる質問です。研修会社の案内を見ても「生成AI活用研修(半日)」といった見出しが並ぶだけで、中身が比較できません。
この記事では、全4回のカリキュラムを時間割の粒度まで公開します。前提は情報システム部門を持たない中小企業で、講師は社内の担当者、受講者は普段は表計算ソフトと電子メールで仕事をしている社員です。
1. 結論:研修は「自社の実業務」を教材にしないと定着しない
研修の成否を分けるのは、講師の話術でも教材の分量でもありません。演習で扱う題材が、受講者が明日も触る仕事かどうかです。ここを外すと、直後の満足度が高くても翌週には誰も使っていない結果になります。
1-1. 一般的な操作研修が翌週に消える理由
汎用の操作研修は「架空の会社の議事録を要約する」といった課題で進みます。操作は覚えられますが、翌週に自分の仕事の前に座ると、目の前の業務を研修の課題へ翻訳する作業が発生します。この翻訳が面倒なので、結局は元のやり方に戻ります。
もう一つの理由は、失敗の経験がないことです。うまくいく前提のサンプルだけでは、実務で最初に出会う「思っていた答えと違う」に対処できません。意図的に失敗させ、その場で直し方を体験させる設計が要ります。
1-2. 教材を自社業務に置き換えるだけで変わること
題材を自社の実業務に置き換えると、研修中に作ったものがそのまま業務で使える状態になります。受講者は「研修を受けた」ではなく「今週の作業が1つ減った」という体験を持ち帰ります。当社が自社で研修を行ったときも、初日から実際の業務ファイルを触らせました。その記録は【AI導入日記#6】非エンジニア社員の研修初日に残しています。
1-3. 設計の前に決める3つ
書き始める前に、次の3つを文章で決めます。曖昧なまま日程だけ押さえると、内容が毎回ぶれます。
- 対象者:職種と現在のスキルを1行で書く。「経理・総務の担当4名。表計算ソフトは日常的に使うが、生成AIは未使用」など。
- 到達目標:受講後にできることを観察できる行動で書く。「使えるようになる」は目標になりません。「担当業務のうち1つを、他人が再現できる指示文にして共有場所に置ける」なら判定できます。
- 持ち帰る成果物:各回の終わりに手元に残るものを決める。指示文、確認チェック項目、処理済みの成果ファイルのいずれかです。
到達目標を「観察できる行動」で書くと、研修後の効果確認が議論になりません。第三者が判定できる言葉を選びます。
2. 全4回の時間割|各回90分・週1回の設計
4回・週1回・各90分を標準形にしています。回と回の間に自分の業務で試す期間を置き、詰まった点を次回の冒頭で扱うためです。この設計にすると、研修が実務の相談窓口として機能します。
| 回 | テーマ | 到達目標(判定できる行動) | 持ち帰る成果物 |
|---|---|---|---|
| 第1回 | 任せる仕事と任せない仕事の線引き | 任せてよい作業と任せない作業を3つずつ挙げ、理由を説明できる | 自分の業務の仕分け表(A4一枚) |
| 第2回 | 指示文を手順書として書く | 同僚が同じ結果を再現できる指示文を1本書ける | 自分の業務用の指示文1本 |
| 第3回 | 出力を確認する型をつくる | 誤りを含む出力から誤りを指摘し、提出前の確認手順を説明できる | 確認チェック項目(5〜7項目) |
| 第4回 | 自分の業務へ実装して運用開始 | 毎週使う手順を1つ、共有場所に置いて他人に説明できる | 共有場所に登録済みの手順1件 |
2-1. 第1回:任せる仕事と任せない仕事の線引き
最初の90分は、操作の前に仕分けから入ります。自分の1週間の業務を書き出させ、「下ごしらえ」「判断」「確認」の3つに分類させます。そのうえで下ごしらえの作業を1つ実際に処理させ、想像と実物の差を体験させます。
| 時間 | 内容 |
|---|---|
| 0〜10分 | 方針の共有(なぜ導入するか・入力してよい情報の範囲) |
| 10〜30分 | 自分の1週間の業務を書き出す(個人作業) |
| 30〜50分 | 下ごしらえ/判断/確認の3分類と、隣席との読み合わせ |
| 50〜80分 | 下ごしらえ作業を1つ選び、実際に処理する(講師は巡回のみ) |
| 80〜90分 | 仕分け表の提出、次回までの宿題 |
※冒頭10分は、社内ガイドラインをそのまま読み上げる時間です。ガイドラインが無い場合は研修より先に作ります。作り方は生成AIの社内ガイドラインの作り方で扱っています。
2-2. 第2回:指示文を手順書として書く
第2回の主題はプロンプトの書き方ですが、テクニック集としては教えません。「自分がやっている手順を、知らない人に説明する文章として書く」と定義します。こうすると受講者は業務手順の言語化に集中でき、覚える型が1つで済みます。
書かせる要素は、①誰向けの何を作るか ②材料としてどのファイル・情報を渡すか ③制約(文字数・体裁・使ってはいけない表現) ④出力の形式、の4点です。4点が揃うと、同僚が同じ指示文を使っても近い結果になります。再現性はその場で隣の人に試させて確認します。
長い資料を扱う回でもあるため、一度に渡せる情報量に上限があることにも触れます。コンテキストウィンドウという用語を覚える必要はありません。「資料が長すぎると後半が雑になる」現象を体験させ、分割して渡す作法を身につけさせます。
2-3. 第3回:出力を確認する型をつくる
第3回は、意図的に誤りを含む出力を配って始めます。数字が原資料と違う、根拠のない固有名詞が入っている、指示にない結論が加えられている、といった誤りを仕込み、受講者に赤入れをさせます。
ここで扱うのがハルシネーションです。用語の説明より、「原資料に無い記述は原資料で照合する」という手順に落とし込みます。成果物は確認チェック項目5〜7個です。項目は受講者自身の業務に合わせて書かせ、講師は文言を整えるだけにします。
確認の型を作らずに運用を始めると、最初の1件の誤りで社内の信頼が失われます。4回のうち削ってはいけないのがこの回です。
2-4. 第4回:自分の業務へ実装して運用開始
最終回は新しいことを教えません。第2回で書いた指示文を毎週使える形に整え、共有場所に登録する時間に充てます。共有場所は社内の共有フォルダでも Claude のプロジェクト機能でも構いません(組織のメンバーへの共有は Team・Enterprise プランの機能です。2026年8月時点)。個人の手元だけに置かないことが条件です。
最後の20分は、受講者が全員の前で自分の手順を1分ずつ説明します。説明できない手順は、まだ手順になっていません。この1分が、他部署へ広がるときの種になります。
3. 階層別の分け方|一般・リーダー・管理職で目的が違う
全員に同じ研修を受けさせる設計は、参加率と満足度を下げます。階層ごとに解決したい問題が違うからです。
| 対象 | 回数・時間 | 研修で解決する問題 | 重点を置く回 |
|---|---|---|---|
| 一般社員 | 全4回×90分 | 自分の作業が減らない | 第2回・第4回 |
| リーダー層(課長・チーム長) | 全4回+棚卸し回1回 | チームのどの業務から手をつけるか決められない | 第1回・第3回+追加回 |
| 管理職・決裁者 | 60分×1回 | 何を承認し、何を止めるかの基準がない | 判断項目の確認+5分の実操作 |
3-1. 一般社員:手を動かす時間を最大にする
一般社員向けは、講義を短く、演習を長くします。90分のうち講師が話す時間は合計30分以内に収め、残りは手を動かす時間と隣席との読み合わせに使います。1グループは講師1名あたり6〜8名が目安です。それ以上は、演習中に机を回って個別に声をかける時間が取れないため、サポート役をもう1名置きます。
3-2. リーダー層:チームの業務棚卸しを追加する
リーダー層には、4回の後に「チームの業務棚卸し」を1回追加します。メンバーが第1回で作った仕分け表を持ち寄り、チーム単位で優先順位を決める回です。決めるのは、次の3か月で手をつける業務を2つまでに絞ることです。数を絞らないと、全部が中途半端に終わります。
3-3. 管理職・決裁者:判断項目を60分で、うち5分は自分で触る
管理職向けは操作の習得を目的にしません。60分で扱うのは、入力してよい情報の線引き、費用の考え方、成果の見方、撤退の判断基準の4点です。
ただし、一度も触っていない人が投資判断をすると、判断が伝聞に基づいてしまいます。当社の研修でも、決裁にあたる立場の人間に5分だけ自分の資料で試してもらったところ、そのあとの議論が早く進みました(【AI導入日記#6】)。おすすめは、一般社員の演習回とは日程を分けたうえで、管理職向け60分の中に5分の実操作を入れる形です。演習回に同席させると、受講者が本音の質問をしにくくなる場面があります。
4. 演習の作り方|「正解が社内にある」課題を選ぶ
設計で最も手間がかかり、最も効果に効くのが演習課題です。ここを外部のサンプル教材で代用すると、第1章の「翌週に消える研修」になります。
4-1. 演習が満たすべき3条件
- 正解が社内にある:過去に人がやった成果物が残っている業務を選びます。出力の良し悪しをその場で実物と比べられます。
- 20分で終わる:1回の演習は20分以内で完結する大きさに切ります。終わらない演習は苦手意識を残します。
- 明日から使える:作ったものが翌営業日の業務でそのまま使えることを条件にします。使えないなら題材を見直します。
4-2. 教材データの作り方
実業務のファイルをそのまま使うと、取引先名・個人名・金額が研修資料として社内に出回ります。教材化の際は、社名を「A社」、担当者名を「担当者A」、金額を桁だけ残した概数に置き換えます。
置き換えたファイルは保存場所を分け、研修後の扱い(保管期間・削除)まで決めます。決めずに配布すると、研修資料が管理外の場所に残ります。
4-3. 講師が事前に用意するもの
- 受講者ごとのアカウントと初回ログインの確認(当日30分を溶かさないため)
- マスキング済みの教材ファイル一式(第1回〜第4回分)
- 誤りを仕込んだ出力サンプル(第3回用・3〜5パターン)
- 指示文の記入用紙(4要素の枠を印刷したもの)
- 共有場所と、そこへの登録手順1枚
5. 研修後の定着施策|終わった翌週からが本番
研修は受講者の行動が変わって初めて成果になります。最終回の日程を押さえるとき、同時に次の3つも押さえてください。
5-1. 2週間後の30分フォロー
接点の置き方は、回と回の間は1週間、初日の直後だけは翌営業日に15分、全4回が終わったあとは2週間後に30分です。最終回後のフォロー会の議題は「使えていない人が、どこで止まっているか」の1つに絞ります。止まる原因は技術面より「この業務に使ってよいのか分からない」という判断待ちが大半で、その場で判断を示せば再開します。
5-2. 指示文の置き場所を決める
各自が作った指示文は共有場所に集約します。当社は社内ルールと指示の前提を1つのファイルにまとめて運用しており、その考え方は【AI導入日記#4】CLAUDE.md に社内ルールを書いたら、AIの出力が安定したに書いています。置き場所が決まると、新入社員が入ったときの教育コストが下がります。
5-3. 月1回の棚卸しで教材を更新する
月1回30分、集約した指示文を見直す時間を設けます。使われていないものは削除し、よく使われているものは説明を足します。この作業が次回の教材更新を兼ねます。定着しない会社の共通点は【AI導入日記#9】AI導入が「定着しない」会社の共通点で整理しています。
6. 内製と外注の分かれ目、助成金の扱い
6-1. 内製できる条件
このカリキュラムは、次の3条件が揃っていれば内製できます。①対象業務を自分で回している担当者を講師として1名確保できる ②社内ガイドラインが文書として存在する ③教材のマスキング作業に半日確保できる。欠けているものがあれば、そこだけを外部に頼む形で構いません。
6-2. 外注する場合に確認すること
発注する場合の比較の観点は次の5点です。総額だけを並べても比較になりません。
| 確認項目 | 確認の仕方 |
|---|---|
| 教材は自社業務を使うか | 「当社のファイルを教材にできますか」と直接聞く |
| 到達目標の書き方 | 提案書の目標が観察できる行動で書かれているか |
| 受講後の質問窓口 | 終了後の質問期間と窓口を契約書で確認する |
| 成果物の所有 | 指示文・手順書が自社に残り、次の体制へ引き継げるか |
| 階層別の設計 | 管理職向けと一般社員向けを分ける提案になっているか |
6-3. 助成金は「使える前提」で設計しない
社内研修の費用については、厚生労働省の人材開発支援助成金など職業訓練を対象とする制度の活用を検討する余地があります。ただし対象となる訓練の要件・時間数・手続きの順序は制度ごとに定められており、設計を始める前に確認が必要です(2026年8月時点)。
注意すべきは順序です。制度によっては訓練開始前の計画届出が要件になっており、実施してから申請しても対象にならない場合があります。「後から申請すれば通る」という前提でカリキュラムを組まないでください。個別の判断は、制度の公式資料と労働局・事務局への確認、および社会保険労務士など有資格の専門家への相談が前提になります。制度は厚生労働省の雇用関係助成金検索ツールで探せます。Claude 導入に関連する制度の全体像はClaude 導入に使える補助金・助成金で整理しています。
研修の対象人数とアカウントの席数は連動します。受講した社員がすぐ使える状態でないと、最初の2週間の勢いが失われます。プランと席数の考え方はClaude 法人契約の料金・プラン比較で、最新の料金は提供元の公式プラン一覧で確認してください。契約から研修までの並べ方に迷う場合は、Claude 法人導入支援で当社が扱う範囲を公開しています。
よくある質問(FAQ)
全4回ではなく、1日集中で終わらせることはできますか?
可能ですが、回の間に自分の業務で試す期間がなくなり、詰まった点を次回冒頭で扱う設計が失われます。日程が取れない場合は、1日で第1回・第2回を行い、2週間後に第3回・第4回を行う分割をおすすめします。
社内に講師ができる人がいません。どうすればよいですか?
講師に必要なのは製品知識より、対象業務を自分で回した経験です。経理の研修なら経理の担当者が適任で、AIの詳しさは二の次です。確保できない場合は、第1回と第3回だけを外部に依頼し、第2回・第4回を社内で回す分担が現実的です。
研修の効果はどう測ればよいですか?
満足度アンケートだけでは、受講者の行動が変わったかどうかを判定できません。判定できるのは、共有場所に登録された手順の件数と、それが1か月後も使われているかどうかです。時間削減の金額換算を行う場合は、研修前に対象作業の所要時間を記録しておく必要があります。
研修の前に社内ガイドラインは必ず必要ですか?
必要です。第1回の冒頭で「入力してよい情報の範囲」を示せないと、受講者は演習中に手が止まります。完成度の高い規程である必要はなく、入力禁止情報・確認責任・相談先を書いたA4一枚があれば始められます。草案を先に作り、研修の場で読み合わせて実態に合わせる進め方が扱いやすくなります。
4回のうち1回しか時間が取れません。どれを選ぶべきですか?
第3回(出力を確認する型をつくる)です。確認の型を持たないまま運用を始めると、最初の1件の誤りで社内の信頼が失われるためです。第2回の指示文づくりは、第3回の演習の中に短縮版として組み込めます。
📚 出典・参考(2026年8月6日確認)
- 厚生労働省「人材開発支援助成金」
- 厚生労働省「雇用関係助成金検索ツール」
- Anthropic「Claude Plans & Pricing」(プラン・席数の最新情報)
- Anthropic「プロジェクトについて」(共有は Team・Enterprise プラン)
※制度の要件・対象経費および料金プランは変更されます。実施前に必ず各公式ページでご確認ください。カリキュラムの構成は当社の支援実務にもとづく設計であり、業界共通の標準ではありません。
この記事について
執筆・編集:MGK編集部(株式会社エム・ジー・ケイ)
編集責任者:代表取締役 山崎 将史
当社は記事制作に Claude/Claude Code を活用し、事実確認と掲載判断は人間が行っています。工程ごとの担当は 編集方針・AI利用の開示 で公開しています。記載内容の誤りは お問い合わせ よりお知らせください。
自社の場合はどう進めればよいか、60分で整理します
対象者の選び方、教材にする業務、内製と外注の切り分けまで、その場で持ち帰れる形にします。情報システム部門がいない体制でも進められる形でご提案します。初回相談は無料、オンラインで全国対応です。