📋 この用語の要点(MGK編集部)
カスタマージャーニーマップとは、顧客が商品やサービスを知り、比べ、購入し、再び訪れるまでの行動と心理を時系列で並べた図です。接点がWebと店舗、広告とSNSに分かれた今、施策は部署ごとに増えがちで、全体のどこが抜けているのか見えにくくなっています。顧客の道筋を一枚に並べることで、力を入れるべき場所と、逆にやめてよい施策を落ち着いて判断できます。
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「カスタマージャーニーマップ」とは
カスタマージャーニーマップは、顧客が自社を知る前から、購入し、その後も付き合いが続くまでの一連の道筋を、時間の流れに沿って一枚に整理した図です。日本語では「顧客行動プロセス図」と呼ばれることもあります。売る側の都合で工程を並べるのではなく、顧客の目線で「そのとき何をしていて、何を感じていたか」を並べるところに特徴があります。
横軸と縦軸で組み立てる
横軸には段階を置きます。認知、興味、比較検討、購入、利用、再訪や紹介といった流れが基本形です。縦軸には、その段階ごとに整理したい項目を並べます。よく使われるのは次の項目です。
- 行動(検索した、資料を見た、店に行った)
- 接点(検索結果、SNS、チラシ、電話、店頭)
- 思考と感情(迷い、不安、期待、面倒に感じた点)
- 課題(顧客がつまずいた場所)
- 打ち手(自社が用意すべき情報や仕組み)
いま実際に起きている道筋を描いたものを現状型、こうなってほしい道筋を描いたものを理想型と呼び分けることがあります。実務では現状型から先に作ります。現状が見えていないまま理想を描くと、絵に描いた計画になりやすいためです。両方を並べると、埋めるべき差がそのまま課題の一覧になります。
似た言葉に購買行動モデルがありますが、こちらは一般的な購買の流れを整理した枠組みです。カスタマージャーニーマップは、その枠組みに自社の顧客の具体的な言葉や接点を当てはめ、打ち手に落とすための作業図です。
なぜ重要なのか
顧客の接点が増えたことで、一つの部署や一人の担当者が全体を把握しづらくなりました。中小企業では担当が兼務であることも多く、目の前の作業に追われて全体像を確かめる時間が取りにくいという事情もあります。
社内の共通言語になる
営業、店舗、制作、外部の協力会社が同じ図を見て話せるようになります。「反応が悪い」という感覚的な話も、どの段階で止まっているのかという具体的な議論に置き換えられます。人の入れ替わりがあっても引き継ぎしやすくなる点も利点です。社長の頭の中にだけある顧客像を、社内で見える形にしておく効果もあります。
抜けと重複が見つかる
広告には費用をかけているのに、問い合わせ後の返信の型が決まっていない。来店後の連絡手段がない。こうした抜けは、施策を単体で見ていると気づきにくいものです。逆に、同じ段階に似た施策が重なっていることも見えてきます。予算を増やす前に、抜けを埋めるほうが効果が出ます。
実務での使い方・進め方
作る手順の目安
- 目的を一つに絞る(新規獲得か、離脱の防止か)
- 対象となる顧客像を一つ決める
- 実際の顧客の声や問い合わせ記録を集める
- 段階を並べ、行動と感情を書き込む
- つまずいている場所に印を付ける
- 印の場所に対する打ち手を書き出し、順番を決める
最初から精密に作り込む必要はありません。手書きや簡単な表から始め、関係者で一度話し合う形でも十分に機能します。
発注側(中小企業)が準備すべきこと
制作会社や広告会社に相談する場合、発注側が用意できる材料の質が結果を左右します。あらかじめそろえておくと進行が速くなるのは、問い合わせや相談の実際の記録、既存客が選んだ理由と断られた理由、来店や申し込みまでの平均的な期間、現在使っている媒体と費用の一覧です。
判断すべきことも発注側に残ります。どの顧客層を優先するのか、どの段階に予算を寄せるのか、社内で対応できる範囲はどこまでか。これらは外部が代わりに決められません。逆に、図の作成そのものや調査の設計は外部に任せやすい部分です。何を渡し、何を自社で決めるかを最初に切り分けておくことをおすすめします。
作った図は、施策を決める会議で毎回開く資料として置いておくと生きます。商品の入れ替えや媒体の変更があったときに見直す、という運用が現実的です。更新の担当者を一人決めておくと放置されにくくなります。
よくある誤解と注意点
誤解1 きれいな図を作ることが目的
色分けや装飾に時間をかけても、打ち手が出てこなければ意味がありません。目的は、どこに手を入れるかを決めることです。見た目より、つまずきの場所が正しく書けているかを優先してください。
誤解2 想像だけで描いてよい
社内の思い込みだけで描くと、都合のよい道筋になりがちです。数件でも実際の顧客に話を聞く、問い合わせの文面を読み返す、といった裏付けを一つは入れておくと精度が変わります。
あわせて注意したいのは、一枚の図で全ての顧客を表そうとしないことです。顧客層が明確に分かれている場合、無理に押し込めると平均的でぼやけた図になります。優先度の高い層から一枚ずつ作るほうが実務的です。少なくとも、誰に絞った図なのかを図の中に明記しておきます。また、作ったものが正しいかどうかは、実際の反応を見て確かめるしかありません。図は結論ではなく、試す順番を決めるための仮説として扱ってください。
よくある質問
Q. 作成にどれくらい時間がかかりますか?
A. 規模や目的によって幅があります。関係者で半日話し合って粗い版を作り、その後に材料を足して整えるのが取り組みやすい進め方です。最初から完成版を目指さないほうが続きます。
Q. 商品数が少ない小規模な事業でも役に立ちますか?
A. 役に立ちます。商品が少ないほど、購入前の不安や比較の材料が勝負を分けやすく、その場所を特定する用途に向きます。段階を三つか四つに絞った簡易な形でも構いません。
Q. 購入までの図だけ作れば十分ですか?
A. 購入後まで含めることをおすすめします。再購入や紹介は費用をかけずに売上に結びつく余地があり、購入後の不満は評判にも影響します。購入で図を終えると、その部分の打ち手が抜けたままになりがちです。